藤谷修「船に乗れ!」 感想

今回は藤谷修の「船に乗れ!」のネタバレ感想をつらつらと書きたいと思います。あまり、具体的なネタバレをしないようには書いています。


以前舞台を見たのをきっかけにこの本を手に取りました。舞台も素敵でしたが、小説はもう中盤涙で読み進めないぐらいでした。一旦休憩をして読み終わりましたが、青春をとうに過ぎた大人にこそ染みる小説だと思いました。もちろん青春真っ最中の方にもいいと思いますが。

船に乗れ!

チェリストを目指していた主人公の高校時代を描いた青春小説です。

ブランデンブルク協奏曲が聞こえた時、ヴェートーベンの春が聞こえた時、バッハの無伴奏を聞いたとき、パッと思い出す。私の中でそんな小説になりました。


人生は自分が何もしていなくても、自分ではどうしようもないことに巻き込まれ、その渦の中でもがくことしかできないものだと思う。どんなに一生懸命生きていても、理不尽なことは起こり、それをどうにかやり過ごさなくてはいけない。その繰り返しだ。そうは言っても彼の体験したことは高校生にはあまりにつらい。客観的に見れば、もらい事故くらいかもしれませんが、当人にとってはそれどころではないパニックでしょう。

彼がやらかしたことにしても、あそこまでではなくても、ふっと思い出しては「ぎゃー」っとなる過去の一つや二つはみんなきっとある。そんな日々を積み重ねてきっと今があるんだと思う。

ちょっと思い出したのが、私長いこと楽器を習ってたんですよね。ホントは他の楽器の方が好きだったんですけど。まあそれは置いておいて、レッスンってつらいんですよね。ずっと辛いことをやってると、正直もう何が楽しいんだか、なんでやってるんだかまるで分らなくなってもうただのノルマと化してしまってました。ただ課題をこなしてるだけ、みたいな。でも、もう楽器を止めて何年も過ぎて、ふとした瞬間に昔弾いていた曲をちょっと弾くと楽しいんです。ああ、こんなに綺麗な曲だったのか。ああ、こんな素晴らしい曲を弾いていたのか、と当時は全く気づけなかったことに気づかされる。当時気づけていたらよかったとか思っちゃうんですけど、でもやっぱり当時はもう必死だからそんな事は無理で。それは同時に日常にも言えることで、過去になった今考えると分かっていなかったことも多かったり、こうすればよかったと思えるけど、当時は必死で分からないですよね。

哲学のシーンや先生だって感じる音楽の超えられない壁や、おじいさまの生活のための音楽の話など印象的なシーンがたくさんあります。自分の将来を決めるのってとても難しいし、間違ってたって思ってもその時まで巻き戻すわけにはいかない。立ち止まって考えていると、時間はどんどん進んでいく。それも含めて青春なのかな。

それにしても、音楽の先生とはすごいものだと思う。数か月前から演奏を聞いていてそうなんじゃないかと気づいていたなんて。私の場合も長年師事してきた先生は気づいていた。音で本当に気持ちがわかるんだなあ。出ちゃってるんだなあ。私はそれに答えることはできなかったけど。

しかし、私はホントにこの彼女は無理。彼氏に向かって自分の方が上手いとか金持ちだから行けるんだとか一緒に連れて行けとか、高校生だからとか、それだけ必死でバイオリンをやってるとか言われてもホント無理。その留学の間に浮気で、デキ婚で、でも退学になってるけど、文化祭に一緒に参加させてとかホントに無理。理解の範疇を超えてる。いや、理解できる人もいるのかもしれませんし、わかりませんけど。

でも最後すごく安心しました。人間不信とかにならずにちゃんと結婚できててよかったと。普通の幸せを得られて、素敵なことを言ってくれる奥さんと出会えてよかったなと思えました。

昔の自分を抱きしめてあげる。まだまだ遠いなあ。そんな境地にたどり着ける日がいづれくるといいなあ。

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