奥田英朗著「ナオミとカナコ」 感想

奥田英朗の「ナオミとカナコ」を読みました。ネタバレはできる限り避けつつも感想です。ちょいばれはしてるかもしれません。

ドラマで「ナオミとカナコ」を見て、超ハマって原作であるこの小説を手に取りたかったんですが、当時はまだハードカバーしか出ていなかったので文庫本が出るのを待っておりました。先日とうとう本屋の店頭で発見して速攻で買って帰り、一気読みしました。結果夜中の2時でした。作家さんたちのためにはハードカバーを買うべきなのは分かってるんですけど、場所取るし重いので申し訳ないですが、私は文庫派です。

ナオミとカナコ

夫からDVを受けるカナコと親友のナオミによるDV夫のクリアランスプラン

全く正しいとは言えない行動なんですけど、なんとか逃げ切ってほしいと応援してしまう2人でした。全くそういう傾向のない普通の二人が完璧と思って実行するんですけど、まあもともと普通の人なんで穴だらけ。基本ばれないと思って行動しているので、証拠残しまくりです。特に抜けているのが、彼女たちにとってはDV夫でも、その人は義母にとってはかわいい息子で、義妹にとってはたった一人の兄。真相を暴こうとあきらめるわけがない。結構なスピード感で、クリアランプランの遂行とそれが暴かれ、追い詰められていく様がスリル感あふれる小説です。ドラマももちろん大好きでしたけど、この本も面白かったです。

旦那さんが奥さんに暴力を振るう人だったら、仕返しされます。まず無事ではすみません。自分でできなければ、親兄弟が代わりに仕返しします。こういう時に助けなくてどうして家族ですか。家族がいなければ近くの友達が助けます。それが友情です。違いますか。

朱美のセリフです。違いますかと言われればそうですね、と言うしかないんですが。程度の問題はありますが。でもすごく印象に残るセリフです。たとえば自分はどれだけできるだろうか。そう思ってくれる人は自分にどれだけいるだろうか。考えさせられます。ナオミの姉のセリフにも出てきますが、母に頼られても困るという言葉によく表れていると思います。みんな自分自身の生活があり、優先順位がある。私にはナオミの姉が薄情だとは言えません。

被害者家族に共感できない理由

義母

ちゃんと面倒見ないでどうするのよ。あなた専業主婦でしょう

義妹

なんであんたみたいな、たいしたキャリアも積んでない女にわたしの人生がけがされなきゃならないのよ。警察の取り調べでお兄ちゃんの悪口言わないでよ。

これらのセリフにすべてが出ている気がします。

確かに彼らは被害者家族。しかし、夫にはもともとDV歴があり、親が金でもみ消した過去がある。もともとそういう人だと分かっていながら、特に妹はカナコへのDVに気づいていながら見て見ぬふりをしていた。そんなところからむしろ嫌悪感が湧いてくる。

しかも、義母のセリフからもカナコのことをいったい何だと思っているのかと思わされる。子守か何かか?なぜそんなに責められなければいけないのか。むしろあんたどんな教育してきたんだよとツッコミを入れたくなる。最大限の被害者面をしながら、結局大して自分では何もしないという。口だけなんですよね。周りがなんとかしてくれるのを待ってるみたいな。まあ、被害者ではあるんですけど。

義妹にしても、結局は自分かよってツッコミを入れたくなるセリフです。しかも、完全にカナコを下に見ていたことがうかがい知れる。

結局、カナコは家族だと思われていなかったんだなあ。嫁ってなんだろう。なんだかなあという気持ちしか湧いてこない。

ここで気付いたのだか、銀行の同僚や義家族や家族らの気持ちは出てくるけど、夫の気持ちが全く出てこない。ホントのところ何考えてたんでしょう。

 彼女たちのクリアランスプラン

カナコが言う真実

暴力を振るうときは発狂して、普通じゃなくなる。以下略ですけど、この近辺のカナコのセリフ全てです

これかなり真実だと思うんですよね。ほんとに実際起こっていることですし。

ナオミの見てきた真実

DVを当人同士に任せるというのは、見捨てることと変わらない

幼いころの経験から、これが彼女にとっての真実だったんだろうと思う。本当に親はなんてものを子供に見せるんだろう。一生消えないのに。

ナオミの正義

悪事を働いた人間が、何の処罰も下されずのうのうと生きている、それが一番腹立たしい

ナオミが新たに持った信念

己の生活を守るためのうそや策略はすべて正当防衛

ドラマでは朱美のセリフとなっていましたが、小説ではナオミの感想なんですね。合法な範囲ではその通りだと思います。

カナコの真実に会い、ナオミの真実と重なり、ナオミの正義とナオミの新たな信念が合わさることによって、排除・運命・クリアランスという言葉の軽減の段階を経て、このクリアランスプランとなり、突っ走ることになったんだと思う。

でもこれは明らかな矛盾だ。自らも悪事で解決してしまったのだから。直美の正義に反する。しかし、彼女にとってはそれは悪事ではないのかもしれない。彼女にとっては正当防衛。でも客観的に見れば悪事であることは間違いない。これが悪事でなくなっては絶対にいけないと思う。

かといって、ではどうしたらカナコの真実が救われるのかと言われたら全く難しい問題だ。カナコの言う通り、ニュースにもなっている結末が実際に起こりうるときにどんな方策をとりえるだろう。二人の行動を正しくないと非難することはできても、次善の案を思いつかない。正しくはない、でも逃げ切ってほしい。そう思わず応援してしまう二人の話でした。

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